ゆりごりら

猫とわたしと大自然

むかしむかしのことー理不尽な謝罪要求

ある日、夫が、村上春樹の本が見つからないと言って、リビングで捜していました。

その前に私は寝室を掃除して、村上春樹らしき本を見かけた気がしたので、「たぶん寝室にあるんじゃないかな?」と声をかけました。しかし、夫は自信満々に「リビングに持ってきたからリビングにあるはずだ」と言いました。その後、数分捜しても見つからず、「もういいや」と諦めていました。

結局、寝室にある本がまさしく捜していた本だったことが判明しました。なので、私は謝罪を要求しました。もちろん、夫には謝ることなんて何もなく(強いて言えば、私を信じてくれなかったことか?)完全なる冗談のノリで、「あやまってっ!!」と迫りました。

「君は唐突な謝罪を要求する時があるよね(苦笑」

その夫の一言で、奥深く眠っていた記憶がイナズマのごとく脳内に浮かび上がりましたので、そのことを懺悔しようと思います。

 

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昔、小学生の時のことでした。当時、私は海外から日本に来たばかりで、日本語が少ししか話せませんでした。しかし、一丁前に自己主張が激しく、意味不明な日本語を並べ立てては周囲の人々を困惑させていました。

 

学校の図工の授業で、本の帯を作るというものがありました。細いもの、中ぐらいのもの、太いものの3種類の形状を選び、自分の好きな絵柄をデザインして描くという、シンプルな作業。私は中ぐらいのものをチョイス。そして、隣の女の子も中ぐらいのものをチョイス。

 

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なぜだか忘れてしまいましたが、その時の私は「真似されたくない」ブーム真っ只中で、真似されることに対して過敏になっていた頃でした。なので、隣の女の子が自分と同じ「中ぐらいのもの」を選んだことに対して真似レーダーが反応してしまい、「真似、しないで!」と迫りました。

 

もちろん帯のデザイン自体は月とすっぽんぐらいの差があり(私がすっぽんの方)、全く異なるものでした。何より、3種類しかサイズがないので、真似もへったくれもありません。唐突に「真似しないで」と言われ、謝罪を要求された女の子は「??真似、してないよ?」と困惑に困惑を重ねていました。

ところが馬鹿な私は、「なにっ!!!明らかに(形状だけ)同じでしょっ!こうなったら先生の判断を仰ごう」と、あろうことかそんなことで先生に提訴したのです。先生の権威により事件を解決しようとする、臆病者でもあったのです。情けない。

 

どこからどう見ても(形状だけ)同じなので、先生が見れば必ず「真似しないで、自分のものを作りなさい」と優しく穏便に忠告してくれるだろうと自信満々に先生に訴えかけました。…が、私の訴状に耳を傾け、神妙そうにうなずいた先生は、「そうか…ところで、どこを真似されたのかな?」と聞くのでありました。

今思えば「そりゃそうだろ」と納得するばかりなのですが、当時の大馬鹿ものの私は先生の反応に相当な衝撃を受け、「見て分からないの!?」と、ものすごく憤慨しました。しかし、かろうじて頭の隅っこに残った知恵らしきものが働き、「何やら戦況がおかしいぞ」と感じとって、すごすごと引き下がったのでありました。重ね重ね、情けない。

 

引き下がったものの、「どうして請求の趣旨が認められなかったのだろう」としこりを胸に抱えたまま数年が経過し…ようやくその事の顛末を理解した時には、すでにその女の子とは別々の学校で、連絡手段もなく謝ることもできず、今に至ります。情けなすぎて、思い返すだけでいたたまれません。

 

あの時の女の子よ、ごめんなさい。自分をぶん殴っておきました。

 

 

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夫が捜していた本はこれでした。寝室のテレビ台の上にて発見。

レキシントンの幽霊 (文春文庫)